制気口とは何かご存じですか?
あまり聞き慣れないかもしれませんが、制気口は日常生活においてとても身近にある存在です。
室内を快適に保つために必要な制気口ですが、管理や取替のタイミングなどを考慮しないと、トラブルの元になってしまいますので注意が必要です。
この記事では、制気口の基本的な情報からトラブルを引き起こす原因と対策、さらに制気口の取付方法について説明します。
制気口とは
制気口とは簡単にいうと、空気を室内外に出し入れする装置のことです。
制気口は、室内に空気を取り入れる「吹出口」と、室内の空気を外に排出する「吸込口」から構成されています。
つまり、制気口の働きとは、古くなった空気を外に吐き出し、新鮮な外気を送り込んで、室内を快適に保つことになります。
制気口が設置されている場所は多岐にわたり、見つけることはそう難しくありません。
主な設置場所は、ホテルやオフィスビル、病院などの空調設備で、室内の環境維持を目的に利用されています。
コンピューターなどの精密機械の質を保つために、空調設備を取り入れているところもあります。
百貨店や学校、旅館、事務所など「特別建築物」に該当する建物は、「建築物環境衛生管理基準」に沿った建物の維持管理が義務付けられています。
空気環境基準も設けられていますので、こうした建物には、必ずといっていいほど制気口が設置されています。
制気口のトラブルを引き起こす2つの原因
制気口は、吹出口から外気を室内に取り入れ、吸込口から室内の空気を外に排出します。
一度設置したらすぐに壊れるほど繊細なものではありませんが、適切に管理しないとトラブルの原因になることもあります。
制気口が原因となる主なトラブルについてご紹介します。
原因1.異物が混入する原因を作る
制気口には、適切に空気の循環を行うため「ダクト」と呼ばれる空気の通り道があります。
ダクトは両端に吹出口と吸込口がそれぞれ設置されている大きく長い管と考えると、想像しやすくなるのではないでしょうか。
常に空気を循環させる必要があるため吹出口と吸込口は、常時開いた状態であることが望ましくなりますが、ここで問題が発生します。
外部からは雨が入り、吹き付ける風がそのまま室内に入ってくることも考えられます。
また、鳥などが紛れ込む可能性もゼロではありません。
制気口にはある程度の大きさがあるため、内部から人や物などが入るおそれも出てきます。
制気口は空調にとって必要な存在ですが、空気以外の「異物」も通してしまうリスクがあるのです。
何でも入ってくる状態が長く続けば続くほど、ケガや設備の老朽化の原因になるでしょう。
原因2.結露を作る
制気口を使用していると、吹出口などに結露が発生することがあります。
結露の原因はさまざまですが、その多くは吹出口の温度と周囲空気温度との差によって発生します。
結露ができると、制気口から水が飛んできたり、室内の機械にダメージを与えたりと、さまざまなトラブルの原因になります。
発生しうる3点の被害
制気口が原因でトラブルが発生した場合、どのような被害が出るのでしょうか。
ここでは「仕事」「ストレス」「健康」の3点から考えてみます。
被害1.仕事の質の低下
制気口が正常に働かないと、空気の循環が悪くなり、室内の空調環境に影響が出ます。
就業時間中オフィスで過ごす必要のあるスタッフにとって、空調環境の善し悪しは、仕事の能率を左右します。
空気が悪ければ不快を感じ、いつもより仕事がはかどらず、仕事の質の低下を招きます。
被害2.ストレスの上昇
空調環境の悪さは、ストレスを与えます。
人は不快を感じると、気持ちが沈み、イライラしやすくなります。
そうすると、健全な人間関係を保つことが難しくなり、お互いピリピリした雰囲気の中、仕事をすることになってしまいます。
被害3.健康被害のおそれ
吹出口に発生した結露をそのままにしておくと、カビやダニの発生につながります。
カビは床や壁、天井など内装にダメージを与えるだけでなく、人がカビを吸い込むことによる健康被害が懸念されます。
ダニが大量に発生することでも、健康被害になるおそれがありますので、制気口を取り付ける際は、取り付け条件によっては結露対策が不可欠になるでしょう。
制気口で室内を快適に保つための3つの対策
制気口によるトラブルを防ぐための対策方法を3つご紹介します。
対策1.必要に応じてカバーを設置する
制気口から異物が入るのを防ぐには、金網、またはグリルを設置するのが無難です。
制気口用の金網は、金属製の線材を混ぜて作られており、ダクト内に取り付けます。
使用される金網は、網目の違いなどいくつか種類がありますが、そのほとんどはクリンプ金網で強度があり、歪みにくいという特徴をもっています。
制気口に設置するカバーには、いくつか種類があります。
「ウェザーカバー」は、雨よけのカバーとして知られています。
ウェザーカバーは、外壁に取り付けるタイプで、ステンレス製や鋼製など、種類は複数あります。
「ベントキャップ」は、外壁などに付いた水滴が、内部に入らないように防ぎます。
防風板付きのベントキャップは、強い風が当たる場所に設置可能です。
雨の侵入を防ぐ目的でよく利用されるのが「ガラリ」と呼ばれる制気口です。
ガラリはブラインドのように隙間があいている羽根板で、「横ガラリ」と「縦ガラリ」がありますが、一般的に使われるのは雨の侵入に強い「横ガラリ」となります。
ガラリは、ウェザーカバーがないため、通常は屋根の下にあるダクト穴に設置されます。
対策2.必要に応じてダクト用フィルターを設置する
フィルターは、メッシュが通してしまう小さな異物(粉塵など)を防ぐ目的で用いられます。
また、液体に含まれている汚染物質もキャッチする働きがありますので、空調環境を整える効果が期待できます。
ダクト用フィルターにはいくつか種類があり、一般的に使われているのは、「集じんフィルター」と呼ばれるものです。
そのほかにも、臭い防止や塩害防止など、特定の効果に特化した「特殊フィルター」もあります。
製品化されている集じんフィルターは、使い続けていくうちに目詰まりなどを起こし、性能が衰えていきます。
そのため、各製品には「初期圧力損失」(新品の状態での圧力損失)と「最終圧力損失」(フィルターがもつ限界の圧力損失)が記載されていますが、これがフィルターの交換目安になります。
さらに、ダクト用フィルターは、集じん効率の違いから主に「粗じん用フィルター」「中性能フィルター」「高性能フィルター」の3種類に分類されます。
粗じん用フィルターは、60%程度の集じん効率をもち、粗い粒子をキャッチします。
集じん効率が高いほどメンテナンスの頻度は高くなりますが、外気を直接処理する粗じん用フィルターは汚れやすく、マメに交換する必要があります。
中性能フィルターは、65%ほどの集じん効率をもち、建築物衛生法など法的な衛生管理基準を満たすよう作られています。
ほとんどの中性能フィルターは、丈夫な素材で作られているため、繰り返し使用できるなど、取り扱い方が容易なフィルターです。
高性能フィルターは、粗じんフィルターや中性能フィルターよりも、集じん効率が高く、95%と高い数値になります。
また、高性能フィルターに「超」が付いた超高性能フィルターになると、集じん効率は99.9%と計算法上では、ほとんどの異物をブロックするといわれています。
超高性能フィルターには、「HEPAフィルター」や「ULPAフィルター」などがあります。
実際にどのフィルターを使用するかは、空調環境や建物周辺の環境、好みなどによって異なります。
設置を検討する際は、性能や予算などを考慮することがポイントです。
対策3.適切なタイプの制気口を選ぶ
制気口にはさまざまな種類があるため、どれにしようか迷うかもしれません。
選び方で失敗しないコツは、設置する建物にあった適切なタイプの制気口を見つけることです。
そのためには、吹出口と吸込口の働きについて、理解することが大切です。
「吹出口」は、室内を快適に保つための空気を送り込む働きをします。
この空気は新鮮な外気であるというだけでなく、適度な温度で室内に入ったときに快適と感じられる状態です。
吹出口は、製品によって風の向きや吹き出し方が異なりますので、理想とする空調条件や室内の条件、大きさ、色など、複数の判断材料を考慮して、もっとも条件にあったものを選ぶことがポイントです。
「吸込口」は室内の古い空気を吐き出します。
通常吹出口から離れた場所に設置しますが、こうすることで、室内に空気がほどよく循環するようになります。
室内の空気中にある異物などをキャッチする働きもあるため、空調機の目詰まりを防ぐ目的でフィルターを設置することも可能です。
角型をはじめ、ノズル型、床置き型など、さまざまな種類の吹出口と吸込口が市販されています。
選びきれない部分も出てくるかもしれませんが、その場合は専門業者に相談することをおすすめします。
中には、独自のデータをもち、それを参考に適切な製品を提案する業者もあります。
制気口の取付方法例
制気口の取付方法は、製品によって異なります。
ここではざっくりとした取付方法の流れについて説明しますので、実際に取り付ける際の参考にしてください。
制気口の取付工事は、通常第1期から第3期にわかれています。
第1期では、主に換気ユニットの取付工事を行います。
開口部を開け、換気ユニットを取り付けます(換気ユニット取付工事)。
その後外気ダクトや排気ダクトなどを設置し(ダクト工事)、電気配線工事に入ります。
第2期工事では、ベントキャップを取り付けます。
その際、壁スイッチやコントローラ・スイッチの取付位置と、グリルを取り付ける位置に穴を開けます。
第3期工事は、第2期工事で開けた穴に、ダクトまたは壁スイッチを取り付けます。
その際、グリルとダクトを接続し、壁スイッチは結線します。
必要箇所にフロントパネルを取り付けて完成です。
制気口の取付方法は、取り付ける部品の種類などによって異なります。
しかし、大まかな取付方法を把握することで、実際の工事がスムーズになることもあるでしょう。
まとめ
制気口の基礎知識から、取付方法まで説明しました。
制気口には吹出口と吸込口があり、空気を循環させることで、室内の空気環境を適切に保ちます。
制気口によって室内で快適に過ごせるようになりますが、管理を怠るとストレス発生や結露やカビなどに悩まされることになりますので、注意が必要です。
設置する建物にぴったりの制気口を設置し、適切に管理しながら快適な環境を作っていきましょう。