制気口には、室内に空気を取り入れるための吹出口と、室外に空気を吐き出すための吸込口があります。
室内を快適な環境にするため、常に空気を循環させる重要な仕組みですが、 効率を知るために重要なのが圧力損失です。
本記事では圧力損失とは何か、どのような計算式になるかを解説します。
圧力損失とは
圧力損失は、その字の通り本来かかるべき圧力が損なわれる状況を表します。
制気口に関して言えば、制気口に繋がるダクトの中を流れる空気にかかるべき圧力が損なわれるということです。
空気はダクトがまっすぐ繋がっていても、運ばれる距離が長くなればなるほど、少しずつ勢いを失います。
ビル空調などの制気口は数が多く、あらゆる場所に設置されているため、ダクト設計は複雑にならざるを得ません。
途中には継手などもあり、運ばれる方向が変われば、さらに勢いが弱められることになります。
こうしたさまざまな要因により、本来維持できるはずの圧力が削がれることを圧力損失といいます。
ダクト設計においては、もちろん圧力損失を十分に考慮し、必要な対策を講じておく必要があります。
吹出口と吸込口
制気口には、室内に空気を取り入れるための吹出口と、室外に空気を吐き出すための吸込口があります。
ビル空調においては、空調された空気が室内へ送られる吹出口はよく知られていますが、その場の空気を吸い込み、空気を循環させる吸込口はあまり知られていません。
目的によって制気口にもさまざまなサイズや形があり、管理者の立場であるなら、それぞれの用途を知ることが重要となります。
室内に設置され常に人の目にさらされる機器である以上、デザイン面においても、選定が必要になる局面は少なくないでしょう。
また、吸込口は室内の空気を吸い込み、空調機へと戻したり室外に排出したりします。
空気中のゴミやホコリを常に吸い込むため、エアフィルター付き吸込口の設置や適正なフィルターの交換、目詰まりを防止する対策なども必須です。
制気口には種類がある
冷たい空気は下降し、暖かい空気は上昇する性質を活かし、空間の用途や目的に合わせて制気口は作られています。
天井の高さや送りたい空気の到達距離などから、必要な構造を選定しますが、中には現場のさまざまなニーズを満たすために、結露防止カバーやヒーターが付いている制気口などもあります。
温度をセンサー感知し、自動的に吹き出し方向を調整するものなど、近年は高度な機能を持つ制気口も増えてきました。
効率を考える上でも知っておきたい、主な制気口の種類は、以下の通りです。
- 床置き型吹出口(SKF型など)
- システム・グリット天井用吹出口(STE,STL,GTL型など)
- ライン型吹出口(KL,VTL,VL型など)
- ノズル型吹出口(MKG型など)
- アネモ型吹出口(C2,E2型など)
- グリル・スリット型制気口
圧力損失を算出する目的
前述の通り、実にさまざまな制気口が存在しますが、いかなる種類であっても重要なのは、圧力損失です。
空気を送り出す機器の能力を示す指標には「風量」がありますが、同時にもうひとつ「機外静圧」という指標があります。
機外静圧をかけると、ダクト内で圧力損失があっても、必要な場所に必要な風量を送り出すことが可能です。
機外静圧は送風機が組み込まれている空調機などで、ダクトの入口で保有される静圧を指します。
静圧と動圧はダクト設計において非常に重要な言葉ですが、制気口まで空気を運ぶ力=圧力を期待どおり持たせ続けられるかが、機器の効率を左右します。
簡単に言うなら、空気を運ぶ力こそ圧力であり、それなくして制気口から空気を送り出したり、吸い込んだ空気を外に運び出したりすることはできません。
静圧はダクト内の空気圧を指し、動圧はダクト内を空気が進む速度エネルギーを指します。
これらを足したものを総圧もしくは全圧と言い、ビル空調を稼働させるための重要な指標となります。
ダクトに空気を送ると、空気抵抗により圧力損失が生じます。
機外静圧は、この圧力損失以上の力でなければ、必要な風量を流すことができません。
つまり、必要な場所に必要な量の空気を送り出すために機外静圧は必要であり、必要な機外静圧を知るために圧力損失の量を知ることが必須となります。
圧力損失の計算式
圧力損失の計算を理解する前に、ダクト径の選定法を理解しておきましょう。
ダクト径が小さい場合、ダクト表面にぶつかる空気の割合が大きくなりますので、圧力損失も大きくなります。
ダクト径が大きい場合、風量に対して圧力損失が減ることで風速が過大になるおそれがあります。
ダクト径の選定法には、定圧法と等速法とがあります。
・定圧法
すべての区間で圧力損失が過大にならないようダクト径を決定する方法
・等速法
すべての区間でダクト内の風速が設計速度に近付くようダクト径を決定する方法
圧力損失の計算では、ファン1台の受けもつダクト系統内に限定し、もっとも圧力損失が生じる可能性の高いルートを選択します。
計算は部位ごとにわけて行い、出た結果を合算したものが、そのルートの圧力損失です。
直管部分の計算式は、以下の通りです。
圧力損失[Pa/m]=摩擦係数×動圧[Pa]/丸ダクト直径[m]
継手部分は、直管のように空気が進む方向は一定ではありません。
当然摩擦損失が大きく生じ、これに関しては、計算式で求めることは困難です。
そのため、継手部分の圧力損失計算は、以下のように行います。
圧力損失[Pa/個]=動圧[Pa]×抵抗係数
最後の「抵抗係数」というのは、あらかじめ決められた数値です。
空衛工事便覧手帳(いわゆる設備手帳)や、建築設備設計基準(いわゆる茶本)には実験などで決定した係数が掲載されていて、継手形状ごとに異なる抵抗係数を用いることになっています。
正しい圧力損失の算出は難しい
ダクト圧力損失の計算は、インターネット上などでフリーソフトを見つけることもできますので、参考までに調べたい場合には重宝します。
ただし、実際には設計図などをもとに、机上で算出しなければならないことがほとんどです。
図面からではダクトの継手形状が正確にわからない場合も少なくありませんし、局部損失係数を選ぶにも、どれが正解かに悩む局面も多いでしょう。
しかしながら、継手部分が曖昧になると実際の圧力損失には大きなズレが生じるため、誤差を少なくするためには専門知識を持つプロフェッショナルを頼りましょう。
まとめ
制気口の圧力損失を知ることは非常に重要ですが、正確な数値を算出することは簡単ではありません。
基本的な計算式をもとに、いかに現場と誤差の少ない数値を得るかは、プロフェッショナルの手腕と言えます。
ダクト圧力損失計算や抵抗計算に関しては、インターネットなどでもフリーソフトを見つけることは可能です。
ただし、実際のダクトの状況は設計図からでは読み取れない場合も多く、施工と乖離しない数値を導き出すのは難しいと言えます。
制気口自体にも多くの種類があり、近年ではさまざまな機能を持つ機器も登場しています。
稼働効率や目的、用途、デザイン面などもすべて含め、ダクト設計から専門知識と技術を持つプロフェッショナルと連携することが望ましいと言えるでしょう。