ビル、工場、マンションなどの建物には、防火ダンパーが取り付けられています。
一体何のために設置されているのか、どのように動作するのか知らないという方も多いのではないでしょうか?
実は、この防火ダンパーは火災が発生したときに、人命や建物を守る非常に重要な役割を持つ装置なのです。
ここでは、防火ダンパーの仕組み、構造、主な役割などについてご紹介していきます。
防火ダンパーとは
最初に、ダンパー(Damper)についてご説明いたします。
ダンパーは、建物内の空調、換気、排煙などを行うために必要となる装置です。
空調用ダンパーには、風量調節用、逆流防止用などいくつかの種類があります。
中でも、防火対策を目的として設置されるものは「防火ダンパー」、「ファイヤーダンパー」などと呼ばれています。
防火ダンパーは、火災による延焼を防いで人命や建物を守るために設置される装置です。
建物の防火区画内をダクトが貫通する場合は、防火ダンパーを必ず取り付けておかなくてはなりません。
建築基準法にも、この防火ダンパーの設置基準が明確に定められています。
防火ダンパーの役割
次に防火ダンパーの役割について見ていきましょう。
最初の項目でも軽く触れましたが、防火ダンパーには火災から人命や建物を守る役割があります。
ビルやマンションなどの建物のダクトにこの防火ダンパーを設置しておくことで、万が一火災が発生したときに、建物内に煙や炎が蔓延するのを抑えてくれるのです。
日本防排煙工業会では、防火ダンパーについて、以下のように定義しています。
”建築基準法、同施行令及び同関係告示に定められ、防火区画を貫通するダクト等の部分に設置され、火災時に温度ヒューズまたは、煙・熱感知器等との連動により、ダクトを閉鎖して火炎や煙の拡散、延焼を防ぐ目的に設置される。
一般空調及び換気系統用または、排煙ダクト用の防火ダンパーがある。”
(日本防排煙工業会のPDF資料より引用:http://www.nbk-net.gr.jp/faq/FD%20Q&A%2020200116.pdf)
防火ダンパーの仕組み
ダクトは室内の空調、換気、排煙を行うため基本的には幾つかの区画を通じています。
平常時は開いた状態で建物の風の通り道となっていますが、万が一、火災が起こった際に炎がダクトを通じて延焼させない様にする設置です。
それぞれの防火ダンパーには温度ヒューズが設置されており、火災による温度上昇で温度ヒューズが溶解すると、自動的に羽根が閉まる仕組みとなっています。
羽根が閉まることで、高温の炎の移動を遮断し、建物内部の火災の広がりを抑えることができるのです。
防火ダンパーの方式
防火ダンパーに取り付けられている温度ヒューズの溶断温度は72℃です。
特殊な装置に関しては280℃で設定されている場合もありますが、防火ダンパーでは72℃が基本となっています。
防火ダンパーは、温度ヒューズのほかにもいくつかの方式あるのです。
「防煙・防火ダンパー」では、遠隔や温度ヒューズによって作動します。
「ガス圧連動防火ダンパー」に関しては、消化ガスによって作動する方式となっています。
また、閉鎖後の復帰に関しても、ダンパーによって「手動式」や「自動(モーター)復帰式」などの方式があるのです。
防火ダンパーの構造
最後に、防火ダンパーの構造についても見ていきましょう。
防火ダンパーの構造は「バタフライ型」、「レバー型」の3つタイプに分けられます。
「バタフライ型」の防火ダンパーは、両側に開く羽根が設置されているのが特徴です。
羽根が開きダクト内を閉鎖する仕組みになっています。
通常時は、この羽根の間に温度ヒューズが挟み込まれており、排気管がオープンの状態となっているのです。
火災が発生してダクト内に炎や煙が入り込むと、その熱によって温度ヒューズが溶解して、羽根が開く構造となっています。
開いた羽根が排気管を閉鎖することで、火災の広がりを抑えることができるのです。
「レバー型」の防火ダンパーは、回転式の構造となっているのが特徴となっています。
バネのパワーによって回転して閉鎖する作用が常に働いているのですが、通常時は温度ヒューズと連動するストッパーによって、その力を止めているのです。
火災が発生すると、その熱で温度ヒューズが溶解して、ストッパーが押し込まれてレバーのフックが解除されます。
そして、レバーが回転して防火ダンパーが閉じられて、排気管が閉鎖する仕組みとなっています。
まとめ
今回は、防火ダンパーの役割、構造などについてご紹介いたしました。
防火ダンパーは、空気調和用ダクトや換気用ダクトの途中に取り付ける装置です。
温度ヒューズが火災の熱で溶解することで、防火ダンパーが自動で閉じて、炎や煙の侵入を防ぐ役割があります。
この装置を取り付けておけば火災が発生したときでも、炎の広がりや煙の蔓延を抑えられるため、人命や建物を守れる確率が高くなります。
防火ダンパーは設置したらそれで完了ではありません。
正常に動作するかどうかのチェックを定期的に行わなくてはならないのです。
建築基準法第8条では、特定防火設備に分類されており、定期的な点検が義務付けられているのです。
万一の火災発生に備えるためにも、忘れずに点検を行うようにしましょう。