ダンパーとはどんな仕組みで動いており、どのような役割を持つ機器なのでしょうか?
名称を耳にしたことのある方も多いかもしれませんが、詳しく知っている方は多くないかもしれません。
本記事ではさまざまな用途を持つダンパーの仕組みやその役割などについて紹介していきます。
ダンパーとは
一般建築用に使用されるダンパー(Damper)は「空気流量制御弁」と言います。
空調用ダクトまたは換気用ダクトの途中や吹出口、吸込口に設けられており、羽根や板の形状で空気の流量をコントロールする開閉装置です。
詳しくは空調用と防災用とに分かれ、空調用ダンパーは建物内にいる人が快適な空調環境を得るために働きます。
建物内の空気が機械によって常にコントロールされていることは、実際に中にいる人たちは普段考えもしないことかもしれません。
あるスペースにある空気を、目的に応じ適切な量と状態にコントロールするのが現代の空調設備の考え方です。
空気の通り道は風道となるダクトであり、その中を通過する空気を制御しているのがダンパーという機材で、防災用ダンパーは火災時に煙から人命を守るためにあります。
延焼を防ぐためには空気のコントロールが最重要であり、人とビルを守るために必須の機材と言えるでしょう。
ほかにも、用途により要求される機能は異なりますが、温度ヒューズが付いたダンパーなどは、防火ダンパー(FD)として活躍しています。
ダンパーの役割
ダンパーの役割を、空調用と防災用に分けてまとめてみました。
空調用ダンパー
まず、空調用ダンパーは、建物の中にいる人に適切で快適な空調環境を提供することが役割です。
空気の通り道であるダクトは建物内部の各部屋、各スペースへ繋がれており、常にきれいな空気を運んだり、室内の汚れた空気を外に排出したりしています。
建物内の人の衛生を守るためには、空気の循環が非常に重要であることは多くの人がご存知であるかと思います。
空調用ダンパーはCO2の排出など、人が快適で衛生的な空調環境を得るための手段となることが役割です。
防災用ダンパー
それに対して防災用ダンパーは、火災時に煙や炎から人命を守ることが一番の役割となります。
ダクト内を遮断し、火災の延焼を防ぐことで建物自体を守る役割も持っています。
特に、ビル火災では人命を守るため、時代の変遷とともに法律も随時改定されてきました。
空気を運ぶためのダクトが煙の通り道になり、ほかの部屋に被害を広げてしまわないよう、防火ダンパーや排煙用ダンパーなどが開発製造されています。
また、ダンパーは建物以外にも船舶用としても製造されています。
ダンパーの方式
ダンパーにはさまざまな形状と方式があり、各所に適切なタイプが設置されます。
風量調整ダンパーはVD(Volume DamperもしくはVariable Damper)と呼ばれ、窓枠に羽根が取り付けられているような形状になっており、風量を調整するのは手動操作のハンドルです。
モーターダンパーはMD(Motor Damper)と呼ばれ、こちらは遠隔操作が可能です。
VDに似ていますが羽根の軸部分に電動機を取り付けられており、自動制御を行うことでON/OFFや風量調整ができます。
ほかにも、遠隔操作可能なダンパーに空気作動ダンパーがあります。
空気作動ダンパーはAD(Air-Piloted Damper)と言い、圧縮空気の空気圧で遠隔操作可能です。
逆流防止ダンパーはCD(Check Damper)と言い、片側からのみ風を流し、逆流を防ぐため羽根が錘などで閉じられています。
防火ダンパーはFD(Fire Damper)です。
防火ダンパーには温度ヒューズが取り付けられており、設定温度を超えた空気が通過した場合、通気を自動的に遮断する方式となっています。
防災ダンパーで重要となるのが排煙ダンパーです。
排煙ダンパーはSMD(Smoke Evacuation Damper)と言いますが、こちらは排煙ダクトに取り付ける方式で、普段は閉塞しています。
火災時に排煙ボタンを押下するとそれに応じて開放される方式です。
また避圧ダンパーはRD(Relief Damper)と言い、ガス放出に伴って室内圧力が上昇するのを強制的に下げるよう圧力設定する方式のものです。
空研工業の型式
空研工業では、一般空調ダンパーはもちろん、防火ダンパーも各種取り揃えています。
風量調整ダンパーの型式は、VDが角形、VD-K、VD-DNが丸形です。
仕様はVDとVD-Kがウォームギヤ式、VD-DNがレバー式となっています。
ウォームギヤとはネジ式歯車=ウォームと、それに合う斜歯を組み合わせた方式です。
防火ダンパーの型式は、FD(角型)、FD-K(丸形)、FD-S(丸形)が温度ヒューズ72℃のタイプで、HFD(角型)排煙系統に取り付けるダンパーで温度ヒューズ280℃と高温対応となっています。
ダンパーの構造
ダンパー自体の構造は、比較的シンプルです。
基本的にダンパー部分を通過する空気量を制御するため、ダクト内の空気の通り道を羽根や板で遮る、もしくは条件下で自動的に開放もしくは完全閉鎖できるような構造になっています。
最もシンプルなものは、手動ハンドルで羽根の角度を変える構造です。
ちょうどルーバー窓のように羽根の隙間を調整し、空気の通過量を制限する仕組みです。
ただし、あらかじめ設定した通りに遠隔操作したり、自動で作動させたりするためには専門の装置が必要となります。
特に防災ダンパーは万が一の事態に迅速にかつ、間違いなく作動しなければなりませんので、装置的にはより複雑な構造になります。
いずれにしても、ダンパーやダンパーを働かせる装置には専門知識が必須であり、高い信頼性が必要です。
空研工業の圧力調整ダンパー
圧力調整ダンパーは、ビル火災などで消火活動の拠点となるスペースの圧力上昇を調整するための重要装置です。
空研工業の圧力調整ダンパーは、遮煙開口部の扉を閉鎖した際、消火活動拠点と隣接室との圧力差が過大になることを防ぐため、空気量を調整し遮煙開口部の扉の開放障害を防ぐことができます。
このダンパーは加圧防排煙システムと連動するものですが、加圧防排煙システムは火災時に室内の煙を排出し、同時に避難経路となる廊下や附室を加圧ファンで加圧して煙の侵入を防ぐことのできるシステムです。
人が避難するルートの安全性を確保し、出火した部分の排煙とその附室に新鮮な空気を加圧することで避難と逆方向へ煙の流れを作ることができます。
加圧防煙システムと圧力調整ダンパーの組み合わせにより、排煙に関係するダクトスペース面積を圧縮し、防煙垂れ壁を不要とする画期的なレイアウトが実現しました。
ダンパーは単に防災力を高めるだけでなく、建物そのものの在り方にも大きく影響を与えるシステムと言えます。
VAVやCAVとダンパーの関係
ここで、VAVとCAVについても解説しておきましょう。
VAV(Variable Air Volume)は、「可変風量制御装置」です。
CAV(Constant Air Volume)は、「定風量制御装置」です。
名称を見ると、ダンパーの働きに似たイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。
確かに、VAVもCAVも、建物内に空調した空気を送る際、風量を調整するために使用するものです。
VAVは、空調ダクト内を流れる風の速さをプロペラなどのセンサーで計測し、あらかじめ設定した風量になるようダンパーの羽根を開閉させることで調整を行います。
それに対してCAVは、ダクト内の風量の増減に関わらず決められた風量を流します。
それぞれをうまく組み合わせることで、室内への調整空気の給気量や排気量をコントロールし、温度や湿度、清浄度を最適に保ちながら空調の無駄を無くすのが役割です。
ダンパーも風量調整装置ですが、大きな違いは基本的にあらかじめ設定した開度を固定するという点です。
ダンパーの場合、ダクト内の風量が変化すればそれに追従して風量も変化しますが、VAVやCAVなら目的の風量になるように自動調整が可能となります。
大型商業施設やビルなどのように内部に複数の区画がある場合、ダンパーだけではどうしても場所による風圧の差が生じてしまいます。
たとえば、あるスペースで空調を使い始めた途端、ほかの部分で急に送風が弱くなり、建物内で快適な空気の取り合いが始まるようでは大変な問題です。
こんなときでもVAVやCAVが付いていれば、常に狙った環境に自動調整することができます。
省エネにも貢献するため、オフィスや大型ビルの玄関ホールや大型イベントスペース、ショッピングモールや映画館などのほか、工場などの空間で快適な環境づくりのためダンパーとともに働いている仕組みです。
まとめ
ダンパーは、建物内で人が快適に過ごせる空間を確保するため、また衛生的で防災面でも守られる空間であるために、非常に重要な役割を果たす機材です。
ダクトの途中や吹出口、吸込口に設置され、そこを通過する空気量や空気の状態に合わせて、あらかじめ設定した適切量に制御する働きをしています。
ダンパー自体の構造は比較的シンプルですが、適切な制御を行うための装置として見た場合には信頼性が重視されるのです。
空研工業では一般ダンパーはもちろん、防煙・防火ダンパー、逆流防止ダンパー、避圧ダンパーなど専門性の高い各種ダンパーを、国際規格に認められる品質で製造販売しています。