空調ダクトは、オフィスビルや飲食店の天井部などに設置されています。
しかし、そのダクトに何の素材が使われているかについては、知らないという人も多いのではないでしょうか。
今回は、空調ダクトの素材を紹介いたします。
また、空調ダクトに求められる性能についても解説しますので、あわせてご確認ください。
これを把握したうえで、ダクト工事などの見積もりを読めば理解が深まるはずです。
空調ダクトの素材には何が求められるか
そもそも空調ダクトの素材には何が求められるのでしょうか。
空調ダクトを選ぶうえで重要なポイントになってきますので、理解しておいたほうが良いでしょう。
まず、空気を汚さないというのは重要なポイントになってきます。
空調というのは、快適な環境を維持するために使われるものなので、ダクト内の素材が空気を汚してしまったのではお話になりません。
さらに、ダクト内は外から見るとわかりませんが、圧力の変化が激しいです。
負圧になることもあれば、外気圧よりも高くなることもあります。
そのため、これらの圧力の変化によって、変形したのではダクトの意味がないと言えるでしょう。
そこで求められるのが、最低限の強度です。
ダクトは、快適な空気を送るためのものですが、ダクト内の環境は金属などにとっては過酷な環境です。
なぜならば、加湿のために蒸気などを付加することもあり、これによって腐食を進めてしまう可能性もあるからです。
そこで、耐腐食性などが備わった材質でなければ厳しいでしょう。
ほかにも、空気抵抗も重要なポイントです。
ダクト内には高速で風が流れていきますので、空気抵抗の大きい素材だと、風の通りが悪くなってしまいます。
さらに、空気抵抗が大きいと、衝撃が発生するので、それによって騒音が発生してしまうのです。
そのため、空気抵抗があまりないというのも重要なポイントになってくるでしょう。
防火の観点から不燃材というのも重要なポイントになってきます。
こういったものがダクトの素材として重要なポイントなるので、覚えておくと良いでしょう。
空調ダクトの素材の種類
ここでは実際に空調ダクトに使われる素材について種類を紹介します。
いろいろな種類があり、それぞれメリットとデメリットが違っていますので、確認してみてください。
亜鉛メッキ鋼板
亜鉛メッキ鋼板は、亜鉛鉄板とも言われる素材です。
一般空調や一般換気のダクトに使われることが多いです。
また、排煙設備にも使用されていることがあります。
亜鉛メッキ鋼板は、最もポピュラーなダクトの素材だと言えるでしょう。
ポピュラーである理由は、費用が安く、大量に使ってもコストによる圧迫を防ぐことができるからです。
鉄の板に亜鉛メッキを施したものになっていて、高温の場合や非常に湿気が多いなど、特殊な環境ではない限り、かなりの耐用年数を誇っています。
さらに、鉄板の厚さによって、いろいろな用途に使うことができるので、とても汎用性に富んだ素材だと言えるでしょう。
ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は、亜鉛メッキ鋼板よりも対候性を必要とされるような場所に使われます。
亜鉛メッキ鋼板よりも、費用が高いため多用するとコストが気になるところでしょう。
主な用途としては、湿度が高い環境で使ったり、軒下や屋外に使われたりすることもあります。
さらに、耐熱性にも優れていますので、ダクト内が高温多湿になる場合であっても問題ありません。
具体的に、ガルバリウムとは何なのかというと、アルミニウムを中心に亜鉛や少量のケイ素を混合して作られたものになっています。
外壁や屋根材として使われていることでも有名です。
ステンレス鋼板
ステンレス鋼板は、多湿の環境に特化した素材だと言えるでしょう。
厨房などのダクトに設置するのが効果的で、ほかには屋外での使用にも向いています。
さらに、光沢感があるので、内装にこだわるような店舗にも向いています。
ステンレス鋼板は亜鉛メッキ鋼板などと比較すると、見た目が段違いに美しい素材です。
ステンレスは、サビに対して非常に高い抵抗力があり、多湿の環境で使うのにとても向いた素材だと言えるでしょう。
高い耐食性と美観を兼ね備えた優秀な素材となっています。
また、ステンレス鋼板は特殊な環境に設置することになりますので、継ぎ手の施工に高度な技術が求められることも多いです。
ステンレス鋼板は、ガルバリウム鋼板よりもさらにコストがかかります。
コストを気にする工事の場合には、使える場所は限定的だと言えるでしょう。
塩ビ被覆鋼版
塩ビ被覆鋼版もステンレスと同様に、多湿の環境に適したダクト素材となっています。
腐食性ガスが発生するような環境においても、しっかりと耐久性を維持してくれます。
そのような意味では、かなり特殊な環境に適したダクト素材だと言えるでしょう。
また、別名で塩ビライニングと言われることもあります。
ダクトのほかには、配管に塩ビのライニング管を使う場合もあります。
大きな特徴としては、やはり耐薬性に優れているという点でしょう。
主な用途としては、薬品工場や病院、研究所などで使われます。
ただし、加工が非常に難しいことで知られていますので、その分だけ施工の際にはコストがかさみます。
そのため、一般的なダクト工事においては使われることは少ないでしょう。
保温フレキシブルダクト
ダクトを見ると、非常に入り組んでいることがわかります。
しかし、ダクトに使われる材質には、そこまで簡単に曲げたりできるものは少ないため、フレキシブルな継ぎ手が必要になってきます。
それが、ここで紹介するフレキシブルダクトです。
これは、ダクトの接続部に設置されるものになっていて、文字どおり保温効果があり、空調機で作られた空気のエネルギー損失を最小限に抑えることができるものです。
また、伸縮自在であるため、かなり柔軟にダクトを設定することができます。
基本的には、ダクトのカーブの部分などに使われることが多く、そういった場所では勢い良く風がダクトに衝突するため、音が発生してしまいます。
保温フレキシブルダクトは高い消音効果を備えていて、騒音問題の発生する可能性を軽減してくれます。
ロックウール
ロックウールは、保温などの目的として使われることが多いです。
保温性に優れているだけではなく、耐火性にも優れています。
素材の詳細としては、内部に石灰などを多く含んでいる鉱物を加工したものになっています。
ローバル
ローバルとは塗料です。
ローバルという企業が提供しており、そのまま企業名で呼ばれています。
どんなものかというと、亜鉛末塗料となっていて、塗布するだけで亜鉛メッキと同等の効果を得られるのです。
非常に高濃度になっている点にも注目です。
ローバルの特徴で特に注目すべき点は、金属のサビ防止でしょう。
非常に高い防サビ性能を備えていて、その耐用年数は溶融亜鉛メッキと同等であると言われています。
塗布するだけで、このような効果を期待できるため、かなり優れた素材だと言えるのではないでしょうか。
実は過去には石綿も使われていた
石綿をご存知でしょうか。
これはアスベストと言われるものですが、人体に有害な物質のため最近では徹底的に排除されました。
しかし、一昔前は、アスベストが空調ダクトに使われていたのです。
アスベストはダクトパッキンに使われていました。
しかも、ダクトパッキンはアスベスト含有率が高いものとして指定されており、アスベストの除去工事の際にも細心の注意が払われています。
ちなみに、ダクトパッキンというのは、ダクトとダクトを繋げる接続部に使われるパッキンのことを指しています。
アスベストは、安価で利用できるだけではなく、耐熱性、耐久性、耐薬品性など、非常に優れた素材になっているので、ダクトにも使われることになったのです。
もちろん、今ではアスベストを使うのは一切禁止になっています。
こちらも豆知識として覚えておくと良いでしょう。
まとめ
空調ダクトの素材について理解が深まったのではないでしょうか。
コストを考えれば、やはり亜鉛メッキ鋼板が一番の素材になってくるでしょう。
最も一般的に使われている素材で、安いからといって、決して強度がないというわけではありません。
用途に応じて厚さを変えることで柔軟に対応することができるのです。
また、高温多湿な環境においては、ガルバリウム鋼版が良いでしょう。
値段は高くなってしまいますが、特殊環境に向いている材質となっています。
見た目にもこだわるのならば、ステンレスをチョイスしたいところです。ステンレスの美しい光沢は、おしゃれなお店にもしっかりとマッチすることでしょう。
ただし、値段はガルバリウム鋼板以上となることを覚悟する必要があります。
研究室や病院などのさらに特殊な環境においては、塩ビ被覆鋼板が良いでしょう。
非常に特殊な環境で使われることが多く、薬品などに対しても強い素材です。