温度を調整したり空気を交換させたりするために、ダクトは大切な存在です。
しかし、大きい音が気になるのも事実で、そのままにしてしまうと周辺地域の方とのトラブルの種にもなってしまいます。
自分たちも仕事や作業をしているときに、大きな音がしていると気になってしまうでしょう。
本記事では選び方のポイントや防音できるおすすめの商品などを解説していきます。
ダクトとは
日本にはさまざまなビルや大型施設などがありますが、必ずダクトが付いています。
ダクトというのは、温度や湿度を調整した空気を送風したり換気させるために必要な風導管です。
もし建物にダクトがないとよどんだ空気がそのまま滞りやすくなってしまい、衛生面でも良くありません。
たとえば夏にデパートやショッピングセンターに入ったとき、ひんやりしていて気持ちが良いと感じたことはないでしょうか。
あんなに広い建物の中を快適な空間にしてくれているのは、冷気や暖気を作り出してくれる機器も大切ですが、その風を送ってくれるダクトも同じように重要な役割を果たしています。
建物の中で気持ち良い温度で快適なのは、空気を送り込む道を作ってくれているダクトのおかげと言っても過言ではありません。
大型施設だけでなく飲食店や住宅にも付いている
空気の流れを良くしきれいな空気を取り込むことは重要であるため、大型の施設やビルだけではなく飲食店や住宅にもダクトは付いており、窓を開けなくても24時間換気してくれます。
ひと昔前の住宅だとダクトが付いていない場合もありますが、最近の家は建てるときに空気の流れも考えて造られています。
天井近くを見渡してみると、24時間換気システムと書かれた箇所を見つけることができるでしょう。
ダクトの種類とは
ダクトの種類はいくつかあり、目的に応じたものを設置します。
そのためダクトの部材を選択する際にも、適材適所で選ぶようになります。
空気の温度をちょうど良くしてくれる
夏は暑いため冷房で部屋の中を涼しくしますし、冬は逆に寒いため温かくします。
この温度の調整は、ダクトを利用して行います。
空調機から部屋の中に送るダクトを給気ダクトと言い、逆に部屋から空調機に戻るダクトを還気ダクトと言います。
部屋の温度をちょうど良いものに設定できるのは、空調用ダクトのおかげでもあります。
換気をしてくれる
部屋の空気は窓を閉めたままだとよどみやすく、さらに人が多いと二酸化炭素も増え、感染症などにもかかりやすくなります。
最近の住宅やビルなどは気密性なども高いため、そのまま空気が流れないと逆に体に悪影響を与えてしまいます。
換気してくれると、部屋の中など室内に新鮮な空気を送り込んでくれるので、外の気持ちの良い空気が吸えるのです。
また、汚れた空気も排出してくれるため、外にいるような新鮮な空気を感じられることもあるでしょう。
よく飲食店で、焼肉など煙が出やすいお店の場合、上に排気ダクトが設置されています。
何も換気を行わなかったら、焼肉を焼いた煙や臭いが充満してしまいますが、上手に煙や臭いを排出してくれるため飲食を楽しむことができるのです。
火事のときに役立つ
滅多にないことですが、万が一火事が起きてしまうこともあるかもしれません。
そういったときに煙を室内から早く外に出すことにも役立っています。
排煙をして、健康被害から人々を守っているのです。
丸型だけではない
ダクトがむき出しになっている場合、丸い形をしているものが多いため丸しかないイメージがあるかもしれません。
ほかにも、四角形状になったものもあり、どのような場所に設置するかでどの形を選ぶか変わってきます。
さらに、継手というものも多数あり、角度があるエルボからT型などの枝分かれしたタイプなどさまざまあります。
ダクトには用途に合った部材がある
丸型や角型のものだけでなく、フレキシブルダクトといううねうねした形のものもあります。
取り付ける部分が特殊な場所である場合もあるため、こういった特徴的な形も造られているのです。
丸や角では対応できない場合、うねうねを上手に活かして取り付けするのです。
混合空気を均一に混ぜる場合はチャンバー、天井ではなく壁や床に埋め込めるスリープ、効率良く空気を通したいときには現場でパネルを組み立てるような方法もあります。
どんな場所でも快適に使えるように、さまざまな部材が揃っているのも特徴です。
素材もさまざまなものがある
用途に合わせて素材もさまざまなものがあります。
気体も空気を通すのか別のものを通すのかでも、適合する素材が変わってきます。
よく使われている素材は鋼板ですが、ショッピングセンター・飲食店など、どのような場所でどのような気体を流すのかで素材も変わります。
錆びにくい素材だと、ステンレス鋼板がおすすめです。
耐久性を求める場合はガルバリウム鋼板が良いでしょう。
気体を流すときに水分や腐食性ガスを多く含む場合は、塩ビコーティングされた鋼板が良く、こちらも耐久性に優れています。
ホールやスタジオで使う場合は、グラスウールダクトが耐熱性だけでなく吸音性も持っているためおすすめです。
ダクトの防音対策
ダクトはなくてはならない大切なものではありますが、騒音も運んでしまいます。
特にビルや大型施設の中を夏は冷房で涼しく、冬は暖房で温かくするために大きな機器を利用します。
空調システムを利用するときには、送風機、冷凍機、空調機など使用するのですが、このときモータを回転させるため、音が鳴ってしまうのです。
特にモータが回転する度に振動が起きてしまうため、近隣の方からクレームを受けてしまうこともあるでしょう。
多少の音で我慢できるくらいであれば問題なくても、気になってしまうくらいの騒音になる場合は対策を考えることが必要です。
たわみ継手を取り付けてみる
空調ダクト業界では、たわみ継手は「キャンバス」の名で親しまれています。
音が出ている箇所に、防音処置を行うだけでも軽減されます。
これまで大変気になると感じていた音も、そこまで不快に感じなくなりますので、音が気になる場合は防音処置だけでもしてみましょう。
特に、振動の影響が大きい接続部分にはたわみ継手を取り付けて、直接振動が来ても不快にならないように遮ります。
たわみ継手を使うだけで、熱での変形を防止できるなど、快適に使用できるようになるのです。
工場の場合 – サイレンサーを取り付けて対策しよう
工場にはさまざまな大きい機器があり、ダクトからも騒音が漏れやすくなっています。
大きい音で夜間も動いているケースも多いため、周辺地域の方のためにも対策をしなければなりません。
機械を稼働することばかりを考えてしまうと、後から近隣の方と騒音トラブルになってしまいます。
ほかにも、あまりにもうるさい環境で働いていると、工場で働く従業員もストレスが溜まってしまうでしょう。
工場の場合、労働安全衛生法というものがあり、85デジベル未満に抑えなければいけません。
それよりも高い場合は騒音となり必ず防音対策が必要です。
防音する方法として、屋外の場合は防音壁を設置することができます。
もしくは、サイレンサーを取り付けると、今まで気になるほどにうるさかった音が気にならなくなります。
ただ、工場から出ている音が、近隣の広範囲に漏れ広がっている場合は音が漏れないようにしっかりと防音壁で囲ったほうが良いでしょう。
機器というよりもダクト内の音が大きいという場合は、サイレンサーを取り付けるだけで音のストレスが軽減されます。
近くで聞いても15デジベル程騒音は下がりますし、さらに離れていくともっと音が気にならなくなります。
たった15デジベルと感じるかもしれませんが、音に対して敏感な方にとっては大きな差となるのです。
事前知識を持って防音対策をしておけば、いらぬトラブルを防げます。
飲食店での騒音 – サイレンサーと防音パネルで対策しよう
特に臭いの排気には力を入れている飲食店も多いと思いますが、稼働状況によっては音がしてしまうこともあります。
振動も工場の場合と同じようにありますので、うるさいと感じることもあるでしょう。
さらに、日中はあまり気に留めなくても、夜間の稼働はうるさいものです。
飲食店の場合、お酒を出すようなお店では、夜間も使用するでしょう。
そのまま使ってしまうと、近隣からうるさいとクレームがきてしまう可能性が高くなります。
この場合、吸音材を利用するかもしれませんが、臭いだけでなく料理で使用した油や消毒などの薬品なども一緒に排出されるため傷んでしまいます。
吸音材だけでなく、防音のためにサイレンサーも検討しましょう。
普通に使っても劣化しやすく意味がなくなってしまう可能性もあるため、状況に応じて径を変えて使用します。
どのように取り付けられているかにもよりますが、隣のビルや住宅などがかなり近く、迷惑をかけている場合は防音パネルも有効です。
工場に比べて隣の建物との距離も近い場合も多いため、状況に合わせた防音対策が必要です。
防音ダクトの選び方
どんなことを基準に選んだら良いのか、いまひとつわからないと感じている方もいるのではないでしょうか。
近隣の人が毎回うるさいと感じる音から、そんなに気にならない優しい話し声のような音くらいにしてくれる防音性の高いものを選びましょう。
せっかく取り付けたのに音がする場合、ほかの箇所、あるいは機器全体などさまざまな箇所が原因かもしれません。
機器すべてを覆うことで、やっと音が気にならなくなることころまで持っていけるケースもあります。
防音ダクトの選び方1.不燃性が欲しい場合
何を排出するかにもよりますが、特に煙の場合は不燃性が求められるでしょう。
素材によっては燃えやすい環境となり、適さない場合もあります。
特に排煙タイプの場合は不燃性が求められますので、選ぶ素材はガラス繊維系の片面にアルミ箔を塗ったものがおすすめです。
防音ダクトの選び方2.耐薬品性が欲しい場合
耐薬品性が欲しい場合もあるでしょう。
すぐに薬品に負けて、使い物にならないのであれば意味がありません。
耐薬品性が求められる場合は、ガラス繊維にフッ素樹脂をコーティングしたものがおすすめです。
防音ダクトの選び方3.自由自在に使いたい場合
先程も少しフレキシブルタイプについてお伝えしましたが、建物に合わせて好きな場所で曲げることができます。
どの建物でもスタンダードな形が使えるとは限りません。
状況に合わせてフレキシブルに動いてくれるため、継手が使えない場所や狭くて曲げないと難しい天井裏でも使えます。
グラスウールで覆うと防音効果が期待できますし、保温性も高いため空調設備でも重宝されています。
防音ダクトの選び方4.素材を考えたうえで防音効果があるものを選ぶ
防音効果だけに目を向けてしまうと、選んだ商品が自分たちの建物や環境に合わないものを選んでしまうかもしれません。
まずは先程お伝えしたように、耐薬品性が良いなど自分たちに合ったダクトを選んだうえで、そこに防音効果も一緒にプラスで付いている商品を見つけましょう。
スタンダードなものではダメだと感じた場合は、最初から自由自在に動かせるフレキシブルなタイプにするなど、まずは環境に合ったものを選ぶことが重要です。
防音ダクトの選び方5.困ったら業者に相談をする
防音ダクトを選ぶときに、「自分たちの建物や環境にはコレ」と決まっていたり把握している場合は問題ありません。
しかし、実際に商品を探してみると多数あり、自分たちに合ったものはどれか悩んでしまうこともあるでしょう。
ほかにも、求めていたようなものがない、購入して試してみたけれどもそんなに音が変わらずうるさいままだったなど悩んでしまうかもしれません。
困ったときには防音対策に詳しい業者に頼むと、専門家の目線でどこが悪いのか見てくれて何を設置すれば音が抑えられるのか適切なアドバイスをくれます。
何が良いのかよくわからないときには、プロに相談してみましょう。
おすすめの防音ダクト6選
どれを選ぶかでも音の出方も変わり、近隣の方への迷惑の度合いも違います。
使いやすく自分たちの機器に適したものを使うようにしましょう。
ここからは実際にどのような商品がおすすめか紹介していきます。
おすすめの防音ダクト1.東芝キヤリア 消音ダクト
音が気になる際にピッタリな商品で、材質は外カバーがポリエチレンテレフタレートで、グラスウールt25の断熱材も入っています。
どのくらの寸法が欲しいのか考え、品番の中から自分に合ったものを注文できます。
おすすめの防音ダクト2.三菱電機 フレキサイレンサー
今の音では大きく近隣に迷惑をかけてしまうという場合、こちらのフレキサイレンサーを使えば消音効果が約12dBとなります。
うるさい音をあまり気にならない音に下げられる商品で、材質はポリプロピレンチューブです。
音を吸収している内面不織布貼りグラスウールが活躍し、音を抑えられます。
煙なども通る場合も、不燃認定番号があるため安心して使えます。
おすすめの防音ダクト3.タイロン グラスダクトCT型
グラスウールでうるさい音を吸収し、気にならないくらいのレベルにしてくれます。
使用する際に温度は気になる部分ではありますが、使用周囲温度は-10℃から60℃まで使えるため便利です。
こちらの仕様も不燃認定品となり、品番も多くピッタリなものを選びやすいでしょう。
おすすめの防音ダクト4.フジモリ産業 サイレントダクトFK
ダクト経路に侵入する音を軽減させます。
音の膨張・収縮等での減音機構であるため、低圧損のまま、低音域から高音域まで優れた減音効果を発揮します。
また、キッチン排気系統を意識した開発製品であるため、高さ方向に関しては従来ダクトと同様の設置が可能です。
※厨房排気系統にご使用いただく際は消防検査対象となりますので所轄消防に事前確認してください。
おすすめの防音ダクト5.大建プラスチックス 防音パイプ
こちらは直接今使っているダクトへ入れて使用するタイプで、簡単に挿入できます。
きれいに使うためにお手入れをすると思いますが、その際は脱着可能なレジスターと一緒に使いましょう。
そうするだけで、日々のお手入れがグンと楽になります。
今使っているものの開口面積などを見て、自分たちの使用しているものにピッタリな商品を探しましょう。
おすすめの防音ダクト6.ACE ウレタン消音材
こちらも防音パイプのように、音を抑えてくれます。
配管内に音が伝わり侵入するのを防ぎ、ノイズを軽減させてくれます。
素材は発砲ポリウレタンの柔らかいものとなっていて、購入した後自分たちでセットするのも簡単です。
設置後汚れたときに交換する際にも、グリル部脱着ができる換気孔キャップなら楽です。
穴の直径なども見ながら、合う品番を選んで購入しましょう。
まとめ
ダクトは建物の中で重要な役割を果たしていますが、設置するときには防音についても考えておかなければいけません。
配慮を怠ってしまうと、トラブルの原因となってしまいます。
選ぶときには自分たちの用途に合わせて部材を選び、さらに防音性が高い商品を選ぶと良いでしょう。
使用している素材もさまざまであり、錆びにくいステンレス鋼板からガルバリウム鋼板、丸形や四角形だけでなくフレキシブルに曲げて自分たちの環境に合わせて使用できるものもあります。
迷ったときには専門業者に直接聞くと、どこからの音が騒音の原因になっているのか的確なアドバイスをもらえるので、おすすめです。